Hitz技報第75巻第1号
IMO(国際海事機関)は、規制海域で運航する船舶から排出される窒素酸化物(NOx)のより厳しい排出規制の実施を2016年から計画している。規制に対応するため、当社では脱硝触媒を活用した船舶用のSCRシステムを開発した。
本システムは、同規制のNOx排出レベルを満たすことを証明する一般財団法人日本海事協会(NK)の鑑定書を取得し、新造就航船にて長期運用による実証を行った。
本稿では、舶用SCRシステムの概要と就航船に適用したシステムの陸上や海上での試験運転結果、長期運用試験で得られた技術的な課題を解決するために自社の多気筒試験機関に適用したシステムでの試験結果に関して報告する。
- 文責者
- 村上 雅明
- 共同執筆者
- 田中 博仲、福山 雅久、藤林 孝博、岡崎 重樹、柴田 隼平、田中 裕士、平岩 俊介、小林 諒平、得津 裕太郎
IMO(国際海事機関)が制定した船舶の排気ガス規制であるTierⅢに対応するシステムとして、当社では脱硝触媒を用いた舶用SCRを開発した。当社の舶用SCRは、蒸発器と反応器で構成されており、蒸発器内では、尿素水を噴霧かつ加水分解させて還元剤であるアンモニアを生成させる。反応器内において、窒素酸化物(NOx)とアンモニアを触媒で還元反応させて無害な窒素と水に戻している。本開発では、舶用エンジンの排ガスを通した蒸発器の内部で尿素水液滴の蒸発や加水分解がどのように進んでいるのかを確認するために、可視化実験を行い、設計データを取得した。舶用SCRエンジンを用いた蒸発器の可視化には、強振動・高温・高圧に耐えること、容易に覗き窓の掃除や交換が行えること、無人で計測が可能であることが装置設計の重要なポイントとなる。これらの技術課題を解決して、得た結果を報告する。
- 文責者
- 藤本 恵美子
- 共同執筆者
- 得津 裕太郎、小林 諒平、田中 博仲、馬場 真二、古賀 重雄
地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出は、世界規模での経済活動の活発化により年々増加傾向にあるが、世界の環境保護の観点からその削減が求められている。これは海運業界に対しても同様であり、具体的には船舶航行の際に船舶から排出されるCO2の排出規制が始まった。よって、舶用ディーゼルエンジンにおいては、CO2削減として燃料消費率の低減が求められている。
日立造船は、この要求に応えるべく、ライセンサと共に新型機関を開発し、日本で初めてとなるG型エンジンを製造した。本稿では、その設計の概要、実機による評価および当社での7G80ME-C9.2機関の陸上運転結果を報告する。
- 文責者
- 怡土 弘典
- 共同執筆者
- 寄口 征彦、小林 達也、元田 隆光
当社では有機媒体ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle、以下ORC)を利用した船舶主機関向け排熱回収設備を開発し、有明工場のテストエンジンにおいて実証試験を実施した。本設備の特徴は、蒸気ランキンサイクルでは回収できなかった低温の排熱を、水よりも沸点の低い有機媒体を作動媒体として使用することによって回収できる点である。これにより、今まで未利用のまま棄てられていた舶用ディーゼル主機関からの排熱を回収し、推進力の加勢または発電に利用することが可能であり、燃料消費量や二酸化炭素排出量を改善することができる。今回の実証試験では、通常、未利用のまま棄てられている主機関の掃気排熱を回収し、機関負荷85%において機関軸出力の2%以上の出力が得られることおよび自動運転が可能であるということを確認した。
- 文責者
- 若宮 和輝
- 共同執筆者
- 八木 厚太郎、元田 隆光、林 博之、深井 康宏、伊妻 恭平
集光型太陽熱発電設備は、スペインおよびアメリカ西部を中心に世界で既に3GW以上が稼動している。さらに、世界で再生可能エネルギーの導入が大規模に進められる中、IEAによれば2035年には81GWに達すると予測されている。当社は、太陽光集光装置に注目し、より汎用性が高い超低設置(高さ3.8m)フレネル式太陽光集光装置の開発を行っている。開発中の集光装置は、各帯状の反射鏡に曲率半径を制御できる機能を持たせ(反射鏡面曲げ制御方式)、太陽の位置に応じて常に近似集点がレシーバーチューブに収まるように、反射鏡の角度と曲率半径を制御しており、フレネル式でトラフ式と同等の集光倍率80倍以上を実現する。また、耐風・耐震性が高いという特徴がある。サウジアラビアでのパイロットプラントでは、集光倍率80倍以上、最高光学効率74%を確認している。
- 文責者
- 馬 東輝
- 共同執筆者
- 芦田 吏史、小坂 浩史、井本 浩一
防災・減災への取り組みとして耐震性向上と情報発信機能を併せ持つ次世代煙突を開発した。特徴は空気中に含まれるNOxの浄化機能を持つ「フッ素樹脂酸化チタン光触媒膜」を煙突外壁に用いることで軽量化を図り、膜素材の特徴を生かした高いデザイン性を可能にした。
本稿では開発製品の特長ならびに外壁膜を外部足場なしに施工する施工新技術の検証結果について報告する。またLEDライティングによる演色性実証結果、風洞実験による耐風安全性の検証結果も提示する。本技術は平成25年5月末に(一社)日本膜構造協会の技術審査を受け構造安全性について支障ない旨の結果を得た。本製品は火力発電所や都市ごみ焼却施設、各種煙突鉄塔工作物を対象とし、国内外へ技術展開している。
- 文責者
- 増田 智成
- 共同執筆者
- 髙鍋 浩二、畑中 章秀、野口 明裕、徳永 吉昭
当社で開発したゼオライト膜は有機溶媒からの脱水だけでなく、ガス分離においても優れた透過分離性能を有する。しかしながら、ガス分離性能を適正に評価する方法がなかったため、我々は新たにガス分離性能と相関性の高い品質評価装置および方法を開発した。開発した品質評価装置はゼオライト膜モジュールに乾燥空気および水蒸気を供給し、湿り度が異なる条件でゼオライト膜から透過した空気の量を測定するものであるため、安全かつ低コストでの測定が可能である。品質評価の結果はCO2透過分離試験の結果と高い相関性があり、Hitzゼオライト膜のガス分離性能を簡便かつ低コストに評価することができる。
- 文責者
- 板倉 正也
- 共同執筆者
- 藤田 優、谷 真衣
Kanadeviaの技術についてのお問い合わせはこちら