累計100基目となる舶用SCRシステムを受注 ~NOxの排出量を削減し、大気汚染を防止~
2021年09月29日
日立造船株式会社は、船舶航行時に舶用ディーゼルエンジンから排出されるNOx(窒素酸化物)を触媒反応によって削減させる舶用SCR(Selective Catalytic Reduction:選択的触媒還元法)システムを2009年に開発しましたが、今回累計100基目となるSCRシステムを受注しました。
IMO(International Maritime Organization:国際海事機関)は、大気汚染防止の観点から光化学スモッグや酸性雨の原因となり、人体や植物に悪影響をもたらすNOxの船舶による排出規制を進めています。NOx3次規制*が2016年に北米の指定海域で適用され、2021年1月には北海及びバルト海が新たな指定海域に適用されるなど、今後も指定海域の拡大が見込まれています。また、こうした排出規制を背景に、舶用SCRの市場は過去4年間平均113%/年の成長をしています。**
*IMOが定める船舶航行時のNOx排出量削減に関するNOx3次規制では、2005年に施行した1次規制(17.0g/kWh)からさらに80%の削減が求められる。
**出典:MAN Energy Solutions
当社は2009年よりSCRシステムの開発に着手し、2014年には舶用ディーゼルエンジンのライセンサーであるMAN Energy Solutions (ドイツ)より、世界で初めて製造供給認証を取得するなど、業界に先駆けて取り組んできました。
また、SCRシステムを搭載する船舶は、既存の舶用エンジンにSCRシステムを追加で設置しますが、機関室のスペースが限られていることから、装置の小型化のニーズが多くありました。こうしたニーズに対応するため、当社は舶用SCRシステムの第二世代型となる「Hitz Green SCR Mk-Ⅱ(以下、Mk-Ⅱ)」を開発し、2019年に販売を開始しました。Mk-Ⅱは、設置面積を従来比で約4割削減し、機器サイズの小型化を実現させ、様々な船舶にSCRシステムの適用が可能となりました。
当社は舶用エンジンと脱硝触媒***を製造する世界で唯一のメーカーであり、舶用エンジンと脱硝触媒の両技術を活かし、船舶に最適なSCRシステムを実現させました。
***脱硝:NOxにアンモニアを添加して無害な窒素と水に変換させる方法。
【当社のSCRシステムの概要と特長】
当社のSCRシステムは、NOxを含んだ排気ガスに尿素水を噴霧し、脱硝触媒を通過させることでNOxを窒素と水に分解し、NOxの排出量を削減します。本製品の特長は、以下の通りです。
・火力発電やごみ焼却発電など、国内外でのNOx処理で多くの実績がある当社独自の脱硝触媒技術を活用しています。
・エンジンから排出された排気ガスに対してNOxの除去処理を行うため、燃費への影響がほとんどありません。
・NOxを分解する還元剤に尿素水を用いることで、船内でも安全に運用できます。
・SCRシステムでは尿素水を使用しますが、当社は尿素粉を投入後、自動で尿素水を製造する尿素水製造装置もオプションで提供しています。SCRの使用状況に応じて適切な量の尿素水が製造でき、運用コストの削減や船内の尿素水貯蔵タンク容量の削減に寄与します。
Hitz Green SCR Mk-Ⅱ
【国別受注数】(エンジンメーカーの国別実績)
日本 |
79基 |
中国、韓国 |
21基 |
当社は、今後もSCRシステムの提供を通じて、気候変動対策及び持続可能な社会の実現に貢献します。