Kanadevia Technical Review Vol.85

[ 短報 ]

近年、キャッシュレスによる支払い方法が多様化しており、経済産業省や総務省によるキャッシュレス普及の促進、そしてデジタル庁による公共事業のデジタル化が推進されている。現在、ごみ処理施設の運営においては、施設利用の渋滞緩和や業務の迅速化・効率化が求められている。そこで当社では、住民サービス向上の観点から、自己搬入者の車両渋滞緩和や請求書作成業務の削減を目的として、自己搬入者、許可業者それぞれに向けたキャッシュレス化に取り組んでいる。豊田市渡刈クリーンセンターにおける実証試験の結果、自動計量システムに2種類のキャッシュレス決済機能を導入し、効果を確認した。
- キーワード
- #自動計量 #キャッシュレス #省力化 #省人化
- 文責者
- 田中秀治
- 共同執筆者
- 益岡俊勝、安永雅典、平林照司、佐藤亨、大嶌収、吉野伸正、佐藤拓朗

廃棄物処理業界では人手不足が課題となっており、IoT・AIを活用した収集運搬業務の効率化が求められている。物流業界では自動配車計画サービスが実用化されているが、家庭系一般廃棄物収集への適用には独特な条件を考慮する必要がある。当社はウェアラブルセンサによるごみ数量検知システムを活用し、AI技術を用いた自動配車計画サービスを応用して収集ルート最適化に取り組んでいる。小田原市の家庭系一般廃棄物委託収集を対象とした実証試験の結果、収集ルート全14コースから1コースを減らし、走行距離としては73km(7.1%)が削減された。また、最適化したルートに対して、収集作業員から非常に肯定的な意見が得られた。本実証により、AI技術を用いた収集ルート最適化検討は走行距離削減に有効であることが分かり、そこに収集作業員の経験や知識を加えることによってさらに走行距離を削減できることが明らかとなった。
- キーワード
- #一般廃棄物 #廃棄物収集 #配送計画 #ルート最適化
- 文責者
- 小川奈那子
- 共同執筆者
- 佐藤亨、壹岐桂一、山本昇

マイクロプラスチックは5mm以下の微小なプラスチックと定義されており、その小ささと普遍性から、水中のマイクロプラスチックを摂取した魚介類への生物濃縮および人間への健康影響が危惧されている。
排水処理施設からの放流水に含まれるマイクロプラスチックは水環境に影響を与える要因の一つと考えられる。よって、当社納入設備の排出実態の調査は、今後マイクロプラスチック問題へ対処する上で必要となる。今回、国内の水処理施設6件、海外実証施設1件を調査したので、その結果を報告する。
原水のマイクロプラスチック濃度は施設の種類によって大きく異なり、プラスチック製品を扱うリサイクル施設および、原水の固形物濃度が高い汚泥再生処理センターについては濃度が高くなっていた。また、処理フローごとのマイクロプラスチック除去性能については、砂ろ過、繊維ろ過の効果が大きく、処理水は1m3あたり数個程度になっていた。このろ過に使われる繊維ろ材からの剥離繊維の流出についても調査した結果、処理水への影響は小さいと判断できる。
- キーワード
- #マイクロプラスチック #排水処理
- 文責者
- 宮﨑悠爾

カナデビア(株)は、2021年から動揺低減を目的とした新型の鋼製浮桟橋(以下、鋼製浮桟橋)について、復建調査設計株式会社と共同で開発を行っている。動揺低減の方法としては、浮桟橋内部に設置されている錘の配置位置を調整することで、波浪と浮桟橋運動の共振現象を回避し、鋼製浮桟橋の動揺低減を図る。まず、鋼製浮桟橋を対象とした基本設計を行い、鋼製浮桟橋の寸法や慣動半径をはじめとした主要諸元を決定するとともに、各部材の応力度照査や局部強度の検討等も実施し、設計仕様を満足していることを確認した。次に、得られた主要諸元を基にした数値シミュレーションにより、鋼製浮桟橋の運動応答の傾向を把握した。また、水槽実験により、鋼製浮桟橋と連絡橋の連成運動を確認し、連絡橋の影響により鋼製浮桟橋の運動応答を大きく低減できることを明らかにした。
本報では、この鋼製浮桟橋を対象とした基本設計、数値シミュレーションならびに水槽実験による検証結果について紹介する。
- キーワード
- #浮桟橋 #連絡橋 #基本設計 #数値シミュレーション #水槽実験
- 文責者
- 竹内海智
- 共同執筆者
- 新里英幸、茂筑雄大、松野進、
(復建調査設計株式会社)南本浩一、保元一志、中尾雪音

当社とセイコーエプソン株式会社は、水晶双音叉型振動子を活用した周波数変化型の3次元振動センサーとそれに基づく機械診断技術を共同開発した。この開発に用いた基本技術は、セイコーエプソンが古くから培ってきたQMEMS技術とデジタルIPコア技術であり、従来のサイズモ系サーボ式や静電容量型をしのぐ高分解能、低ノイズ密度、広帯域性能が得られている。本開発では、機械要素の3次元運動を対象として、直交XYZ軸の3方向にそれぞれ単軸の加速度センサーを配置することによって3次元振動センサーを構成し、これが回転機械の振動測定に対して十分な3軸同期精度を有することを確認した。
近年、産業機械や社会インフラの設備保全に対して、状態診断に基づく予知保全が低コストで効果的であるため注目されている。そこで、開発した3次元振動センサーを用い、例として回転機械の軸振動について3次元リサージュ図形による表現法を考案し、その状態診断への適用可能性を検証した。その結果、本振動センサーは3次元リサージュ図形を描画するために十分な性能を保持しており、適切な前処理を施すことによって機械の基本的な振動成分をリサージュ図形として描けることを確認した。さらに、この振動センサーを用いて実際に回転機械の振動を測定したところ、リサージュ図形の観測から機械の経年変化を捉えられる可能性が見出された。今後はこのようなデータを蓄積し、カナデビア株式会社が別途開発している故障予知機能を有する状態管理・診断システムを充実させるとともに、この3軸振動センサーを同システムに実装していく計画である。
なお、本報の開発内容に対して、2023年度の日本機械学会賞(技術賞)を受賞している。
- キーワード
- #振動計測 #振動解析 #加速度センサー #振動センサー #リサージュ図形 #状態診断 #予知保全
- 文責者
- 瀧谷俊夫
- 共同執筆者
- 畑圭祐、吉識竜太、
(セイコーエプソン株式会社)佐藤健太、轟原正義、吉川泰史、大戸正之
[ 短報 ]

当社では、廃棄物がもつエネルギーを利活用する熱分解ガス化改質システムの開発を行ってきた。本技術は、廃棄物を長期的かつ安定的に処理しつつ、水素リッチな可燃性ガスを製造するものである。
2020年10月に環境省の委託事業「高効率エネルギー利活用に向けた次世代型廃棄物処理システムの開発」に採択され、2022年3月から2023年10月まで本システムの実証試験を実施した。
実証試験では、70kg/hの処理規模で、最長連続運転45日間、合計処理日数173日を達成し、安定した一般廃棄物の処理を実証した。また、投入した一般廃棄物の低位発熱量の約77%を可燃性ガスに変換でき、可燃性ガスは熱供給と発電に利用可能であることを確認した。
- キーワード
- #環境省委託事業 #一般廃棄物 #熱分解ガス化 #エネルギー利用 #ケミカルリサイクル

Kanadevia Inova AG(以下、Inova)は、新たなCFD 解析ワークフローを用いて超大型炉用に新二次空気供給システムを開発した。新CFD解析ワークフローの採用により、ボイラ第一煙道における逆流の発生を高精度で予測することができる。
新二次空気供給システムは、いずれも炉幅18mのアブダビとウォールソール(英国)のプラントで導入が開始されている。本システムの開発によって、以前よりも大きな炉の提案が可能となり、これまで以上に多くの国の環境問題を解決することができる。

Kanadevia Inova AG(以下、Inova)はごみ焼却炉における燃焼と蒸気温度の制御に加えて、SNCR(無触媒脱硝)で高性能を得るためのNOx濃度予測機能を備えるなど、最先端のプロセス制御を可能とする新たなプラットフォームAutaroTM(アウタロ)を開発した。2021年に、Inovaでは全ての新設プラントでAutaroTMによる燃焼制御を導入することにしており、既に複数のプラントに加えて、他社プラントでもAutaroTMによる燃焼制御に成功している。
2024年には、AutaroTMによる燃焼制御と過熱器蒸気温度制御をカナデビアが建設運営するプラント(熊本県八代市:エコエイトやつしろ(八代市環境センター))へ導入し、日本のごみ焼却発電プラントであっても制御可能であるかを確認する。
八代市環境センターへの導入は単なる実証試験にとどまらず、カナデビアとInovaの協業関係をさらに強固にさせるものである。

ごみ分別ボードゲーム「Hokasu」は児童を対象としたごみ分別に関する学習教材であり、「ごみカード・イベントカード・ごみ箱ボード・最終処分場マット・リサイクルポイント・灰」で構成される。特徴として、ごみ分別の学習に加えて、焼却処理で発生する灰を埋め立てる最終処分場が有限であることから、ごみ減量・減容化の重要性も学習できる。
環境イベントや「児童いきいき放課後事業」で、「Hokasu」を活用したごみ減量・減容化に関する環境教育を実践したところ、多くの児童が楽しみながら学習する様子を確認できた。
本稿では、「Hokasu」の特徴や環境教育の実践状況について紹介する。
- キーワード
- #ごみ分別ボードゲーム #環境教育 #教材 #ESD #SDGs

Kanadevia Inova AG (Inova) has developed a proprietary biogas (or CO2) methanation reactor. The first example of the technology was brought to operation in 2022 in Gabersdorf (Austria). The technology allows converting H2 and biogas into substitute natural gas, which can be directly injected in the natural gas grid.
The technology represents a significant advancement in the transition towards excluding fossil carbon from natural gas grids. It plays a crucial role in integrating proprietary technologies, such as anaerobic digestion and water electrolysis, into a comprehensive net-zero strategy.

当社では、温室効果ガス(GHG : Greenhouse Gas)削減に寄与する触媒の開発に取り組んでいる。本稿では、国立研究法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション(GI)基金事業で取り組んでいるLNG燃料船でのメタンスリップ対策となるメタン酸化触媒とアンモニア燃料船でのN2O削減対策となるN2Oリアクタの各開発状況、およびアンモニアから水素を取り出すアンモニアクラッキング触媒について紹介する。
- キーワード
- #GHG削減 #メタンスリップ #亜酸化窒素(N2O) #アンモニアクラッキング

大規模な洋上ウインドファームの計画が各国で進められており、当面は、主に着床式風車の導入が続く見込みである。着床式洋上風車の資本費に占める基礎構造物の製造ならびに設置費用は、およそ20%前後と言われ、さらなる低コスト化が期待されている。
本洗掘解析は、着床式洋上風車基礎構造物の低コスト化に貢献する技術の一つであり、数値流体解析と最適化計算を組み合わせることで、基礎構造物の周囲に生じる洗掘形状を比較的短時間で評価できる。洗掘は、波浪や潮流による底質の流送により生じ、簡易的な計算が難しかった。ここでは、本解析技術について紹介する。
- キーワード
- #数値流体解析 #洗掘 #着床式洋上風車 #サクション基礎 #モノパイル基礎

超音波Bモード法で得られた胎児心臓四腔断面の画像を対象として、AI技術と周波数解析を組み合わせた胎児不整脈の診断技術を開発中である。経験の浅い医師や看護師の診断を支援することが目的で、臨床研究として、国立循環器病研究センター産婦人科部門との共同研究を行っている。
本稿では、左右房室領域の面積抽出や、不整脈の検出および種別判定を行い、得られた判定結果の評価について述べる。
- キーワード
- #胎児不整脈 #画像セグメンテーション #周波数解析

全固体リチウムイオン電池は、低温・高温、真空環境などの極限環境で使用でき、人工衛星、月面探査機などの宇宙機への適用が期待されている。当社は、JAXAと共同で世界初の宇宙空間での実証試験を実施し、当社が開発した全固体リチウムイオン電池「AS-LiBⓇ」が特異な宇宙環境の影響を受けることなく、地上と同様に良好な電池特性を発現することを確認した。本稿では、試験に用いたAS-LiBⓇを紹介し、宇宙実証試験について報告する。
- キーワード
- #全固体リチウムイオン電池 #国際宇宙ステーション #宇宙航空研究開発機構(JAXA)
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